心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリア様。こちらのドレスはどうされますか? マリア様が選びたくないのであれば、私が選びますが……。それでも大丈夫ですよね?」
最後の確認はレオに向けてだ。
レオはエミリーに向かって迷う素振りもなく即答える。
「ああ。グレイは自分で選ぶのが面倒なだけだから、誰が選ぼうがなんとも思わないよ」
「そうですよね」
エミリーもレオも、顔にグレイへの呆れた気持ちが出てしまっている。
マリアはドレスのカタログをジッと見つめ、どうしようかと考えた。
自分が選ばなかったとしても、エミリーが選んでくれるから大丈夫。
その安心感から、落ち着いて考えることができる。
他の人のドレスを選べって言われた時は悲しかったけど、それでよかったのかも。
だって、お兄様が選んだドレスを贈られるほうがもっと悲しいもの……。
冷静になって、そう思えることができた。
だからといって、自分でドレスを選ぶのはやはり抵抗がある。
「エミリー。ドレスを選ぶの、お願いしてもいい?」
「もちろんです!」
そうエミリーが元気に返事をした時、部屋をノックされグレイの声が聞こえた。
コンコンコン
「マリア。……俺だ。少しいいか?」
「!!」
3人がバッと顔を見合わせてから扉を見た。
やっと気持ちの落ち着いていたマリアだったが、その声を聞いた瞬間に一気に鼓動が速くなる。
お兄様……!? なんで……。