心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
83 鈍い男と気づかない男
「マリア、今……俺のパートナーに嫉妬したって言ったか?」
「え……と、あの……」
ど、どうしよう! 思わず本音を言っちゃった!
グレイは眉根を寄せて、真剣な顔でマリアを見つめている。
ここは正直に認めたほうがいいのか、うまく誤魔化したほうがいいのか、恋愛初心者のマリアにはわからない。
頭の中がグルグル回っているような感覚がして、余計に考えるのが難しい。
本当のことを言っていいの?
……でも、嘘をつくのもなんか嫌だな……。
「……うん。言った」
正しい答えはわからないけど、グレイに嘘はつきたくない。
そんな自分の気持ちを最優先に考え、マリアは素直に認めることにした。
この答えを聞いて、グレイがどんな反応するのか不安もある。
嫉妬されたことを喜ぶのか、鬱陶しいと思われるのか、特に何も思われないのか──。
お兄様は鈍いけど、嫉妬したって言ったら少しは私の気持ちに気づいちゃうよね?
ドキドキする胸を押さえ、マリアはグレイの反応を待った。
グレイは相変わらず眉を寄せたままで、不可解そうな顔をしている。
「嫉妬って……なんでマリアがあの女に嫉妬するんだ?」
「なんでって……」
「会ったことがあるのか? あの女に、マリアより優れているものがあるのか?」
「…………ん?」
グレイからのよくわからない質問に、今度はマリアが眉を寄せる。