心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「エミリー。私、お腹すいたから食堂に戻るわ」

「わ、わかりました! すぐに伝えてきます!」


 グレイの背中を押しながらそう声をかけると、エミリーは駆け足で食堂のほうへ急いだ。
 マリアも後に続こうと、グレイから離れて「では失礼します」とだけ声をかけて歩き出す。

 その場にはわけわからない様子のグレイとレオだけが残された。


「グレイ、何があったの?」
「レオ。ヤキモチとはなんだ?」
「は? ……本気で言ってるの?」


 マリアの後ろから、そんな会話が聞こえてくる。
 至極呆れたようなレオの声を聞いて、マリアは吹き出しそうになるのを我慢しながら食堂へ向かった。









 その一週間後。マリアはエドワード王子に呼ばれ、王宮に来ていた。


「丸1日空けてくるように……って、一体なんの用なんだろう?」

「さあ。パーティーの打ち合わせとか?」


 護衛騎士のレオと並び、王宮の中を進んでいく。
 案内されて向かっている先は、王子の部屋でもいつもお茶をする部屋でもないようだ。


「あっ! もしかして、マリアに贈るドレスの件とか? 届いてないよね?」

「うん。でも、それなら家に届くんじゃないの? 私が取りに来るものなの?」

「確かに……。令嬢に直接ドレスを取りに来させるなんて、さすがのグレイでもしないよなぁ」


 グレイ、という名を聞いて、マリアがピクッと反応する。
 そんなマリアを見て、レオが少し迷った様子でコソコソと話し出した。

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