心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「あーー、マリア。先週、グレイにヤキモチ妬いた……って言っただろ?」
「うん。意味を全くわかってくれなかったけどね。レオに聞いてたみたいだけど、ヤキモチの意味を教えてあげたの?」
「いや。教えてない」
レオの答えを聞いて、マリアは安心したような残念なような、複雑な気持ちになった。
自分の気持ちに気づいてほしいけど、気づいてほしくない。そんな曖昧な状態のため、マリアもグレイに聞かれても教えはしなかった。
「お兄様って、やっぱり鈍いよね」
「でも、グレイが今必死に勉強してるって知ってる?」
「……勉強?」
思いも寄らないレオの言葉に、マリアは目を丸くした。
勉強って、何を?
まさか『ヤキモチ』についての勉強じゃないよね?
「グレイのやつ、ガイルにも聞いたらしいんだ。それでガイルに恋愛小説を数冊渡されて──」
「恋愛小説!?」
「いつもなら放置させておくグレイが、今回は全部読んでる……みたい」
「ええっ!?」
お兄様が、恋愛小説を読んでる!?
10年前から、グレイはガイルに恋愛小説を渡されていた。
そのことを知るレオは、グレイが実際に読んでいることに驚いたが、それすらも知らなかったマリアにとっては全てが衝撃であった。