心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ガイルがお兄様に恋愛小説を? なんで?
「よっぽどヤキモチの意味が気になってるみたいだね」
「!」
レオがニヤッと笑いかけてきたので、マリアは焦ってレオの腕をガシッと掴んだ。
「じゃあ、ヤキモチの意味を知られて、私の気持ちもバレちゃうかな?」
「それはどうだろう……。白目状態になりながら読んでるらしいから、実は何も理解できてないんじゃない?」
白目状態で恋愛小説を読むグレイを想像して、マリアは焦った気持ちも忘れプッと吹き出した。
内容は一切頭に入らず、ただただ機械のように本だけを読んでいるグレイの姿が嫌というほど鮮明に浮かんでくる。
確かに、お兄様なら数ページで飽きちゃいそう……!
クスクス笑うマリアを見て、レオもアハハッと笑い出す。
ここ最近はグレイの部屋に行っていなかったマリアだが、帰ったらどんな本を読んでいるのか見てみたい……そう思っていると、案内してくれていた執事の足がピタリと止まった。
「こちらのお部屋でございます」
そう言いながら、静かに扉を開ける。
部屋の中が見えた瞬間、マリアとレオは「……っ」と息を呑んだ。