心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「これは……」
広い部屋の中には、7着の色違い・デザイン違いのドレスが並び、各ドレスの横にはデザイナーらしき人物が立っている。
みんな、マリアに向かって頭を下げていた。
えーーと、これは一体どういう状況?
まさか、このドレスは全部自分の着るドレスの候補なのだろうか……という考えが頭をよぎるが、マリアはそれを必死に否定した。
通常、ドレスを作る際には1人のデザイナーに任せるものである。
財力のある貴族となると、2つ3つのドレス候補を作りその中から選ぶということもあるそうだが、それでも確保できるデザイナーは3人までだろうと聞いたことがある。
しかし──。
7人……いるよね?
まさかここにいる7人が自分のドレスをデザインしてくれたのだろうか……と考えると、マリアの背中にはツーー……と冷や汗が垂れた。
隣に立っているレオも、顔が青くなっている気がする。
「レオ。これって、もしかして……」
「待たせたな、マリア!」
「!」
その時、エドワード王子が部屋に入ってきた。
若いデザイナーの女性達が、エドワード王子を見て頬を赤らめている。
長身で見目麗しい第2王子は、この国の女性から絶大な人気があるのだ。
「どうだ? ドレスは全部見たか?」
そんな女性達からの熱い視線には興味ないのか、王子はそちらには見向きもせずにマリアに近づいていく。