心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 ──数時間後。



 つ……疲れた……!



 最後のドレスに身を包んだマリアは、疲弊しきっていた。

 コルセットまでしっかり着用した状態での試着。
 自分のドレスを選んでもらいたいデザイナー達からの、熱心なアピール。
 そして6人にはお断りしなきゃいけないという罪悪感。
 肉体的だけでなく、精神的にも疲労が溜まる。



 はぁ……。
 途中でエドワード様が気に入るドレスがあれば……と思ったけど、どれを着ても「これも似合うな」しか言わないし。
 まさか本当に全部着ることになるなんて……。



 昔から、マリアは疲弊するとすぐに自動で治癒の力が働くようになっていた。
 そのため、実はあまり疲れを溜めたことがないのである。
 慣れてない疲弊感に、マリアは自分の身体が数倍重くなったように感じていた。


「マリア様。大丈夫でしょうか?」


 ドレスを整えてくれているメイドが、心配そうに聞いてくる。
 疲れが顔に出てしまっていると気づいたマリアは、ハッとして背筋を伸ばした。


「大丈夫。もうこれで最後だし」

「はい……」


 心配そうなメイドに続き、椅子に座って待っているエドワード王子の前に出る。
 すでに足はフラフラの状態だ。

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