心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「んーー……やっぱりこの色も似合うな」
「…………」
またまた同じセリフ。
似合うか似合わないかだけで、デコルテ周りのデザインの違いとか、レースの種類とか、そういったものは見えていないようである。
気にしているのは色だけだ。
エドワード様もお兄様も、ドレスに興味なさすぎよね……。
男の人だから仕方ないのかな。
レオだってずっと楽しそうにこっち見てるし、きっと私がドレスを着ただけで疲れてるなんて思ってないんだろうな……。
むなしいような少し寂しいような、どこか残念な気持ちを抱えたままドレスの試着は終わった。
ドレスを脱ぎ、着てきた服に着替え、やっと終わった……と気を抜いた瞬間。
マリアの身体からは力が抜けて、目の前が真っ暗になっていく感覚に襲われた。
あれ……立ってられない……。
これはダメだと思った時には、マリアは横に立っていたメイドに寄りかかるように倒れ込んでいた。
近くにいたメイドが数人集まり、マリアの身体を支える。
「マリア様!?」
その叫びを聞いて、すぐにエドワード王子とレオがやってきた。
「マリア!?」
そう声を上げるより早いか、エドワード王子がマリアを持ち上げた。
頭がクラクラする中で、王子の叫びがマリアの耳に入ってくる。
「どこか休める部屋を! それから治癒の薬を持ってこい!」
バタバタと使用人達が動き回っている音や声が聞こえる。
マリアの薄く開けられた目の視界に、真っ青になっているレオの姿が見えた。