心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
試着だけで疲れて倒れるって……本当はおかしいのかな?
私が疲れに慣れてないだけ?
そんなことで倒れたのか!? と馬鹿にされるのではないかと、マリアは急に不安になった。
こちらをジーーッと見ているであろう王子とレオの顔を見ることができずにうつむくと、王子が小さな声でボソッと呟く。
「じゃあ……マリアが倒れたのは、俺のせいなんだな」
えっ?
エドワード王子らしからぬ弱気な声に、マリアは驚いてバッと顔を上げた。
王子はどこか放心したような、ショックを受けた顔をしている。
いつもの強気な王子とは違う落ち込んだ様子に、マリアは慌ててフォローを入れた。
「あ、あのっ、エドワード様のせいじゃなくて、今日がたまたま月のない日だから治癒の力が使えなかっただけで……」
「俺が7着も試着をさせなければ、そこまで疲れることもなかったんだろう? そんな大変なことを、月のない日にさせてしまったのは俺だ」
「でもっ、明日には治るし……!」
「今日は苦しめることになってしまったな」
「…………!?」
いつもはすぐに反発してくる王子が、やけに素直に反省して落ち込んでいる。
少し責めたい気持ちもあったマリアだが、実際に目の前でここまで落ち込まれると胸が痛む。
困った視線をレオに投げかけたが、レオも眉を下げて肩をすくめただけだった。
なんだか……エドワード様、変……?
「レオ。今夜、マリアは王宮に泊まらせる。ヴィリアー伯爵にそう伝えてくれ」