心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 顔立ちの整った少年……それがエマが彼に抱いた第一印象である。

 
「だれですか?」


 男の子がエマを見上げながら尋ねてきたが、エマはなんと答えていいのか分からなかった。
 ジュード卿の妻や子どもだけでなく、使用人までもがエマに不審そうな視線をぶつけている。


「その赤ちゃん、寝ているのですか?」

「え? ……えっと……」


 男の子からの純粋な視線に耐えきれず、エマはジュード卿に助けを求めるような視線を送った。
 その様子を見ているにもかかわらず、ジュード卿は何も言わない。

 ポカンとしている妻達に何か説明することもしないまま、ジュード卿はまた歩き出し、部屋から出ていった。
 エマは慌てて彼のあとを追う。
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