心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアが不思議そうにグレイを見つめると、グレイは落ち着いた表情でマリアを見つめ返した。
「マリアをここに泊らせることにならなくてよかった」
「……どうして?」
「どうして……? う、ん。なぜだろう…………マリアをあの王子の近くにいさせたくないから、かな」
「!?」
マリアの質問に、グレイは眉根を寄せて真剣に考えていた。
そして、その素直すぎる答えに、マリアとレオがギョッと驚いた反応をした。
マリアの顔は赤くなり、レオはやけにニヤけたいのを我慢しているような顔をしている。
「お兄様、それって……」
「ん? なんだ?」
嫉妬ですか? と言いかけて、マリアは止めた。
自分から聞くのも躊躇われたし、肯定されても否定されてもたぶん普通ではいられないと思ったからだ。
しかし、そんなマリアの気持ちを汲んでか知らずか、レオが嬉しそうな顔でグレイに話しかける。
「グレイ。それ……それだよ!」
「あ? 何が?」
「……なんか俺には冷たくない? まぁいいや。というか、それ! それが、ヤキモチの嫉妬だよ!」
「……は?」
グレイはポカンとレオを見たあと、顔の赤いマリアに視線を戻した。
マリアは気まずそうに口を閉じ、どこか期待のこもった目でグレイを見つめている。
レオの発言を否定していないことから、マリアも同意見なのだとグレイは悟った。