心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリアを他の男の近くにいさせたくない……が、ヤキモチ?」
「た、ぶん。私も、お兄様が他のご令嬢と一緒にパーティーに行くのが嫌だから……」
「なるほどな」
真面目な顔をしていたグレイが、そう呟くなりフッと柔らかく笑った。
「本を読んでもわからなかったが、やっとわかった。俺は昔からマリアとエドワード殿下を見るとイライラしたが、どうやらずっと殿下にヤキモチというものを抱いていたらしいな」
「なっ……!?」
マリアの顔がさらに真っ赤になる。
少し後ろにいるレオが、小さな声で「この無自覚色男が……!」と言って頭を押さえているのがマリアの目に入った。
そ、それって、もしかしてお兄様も私のこと……?
……ううん。そんなわけない。もしそうだったら、こんなにキッパリと言えないよ。
ここまで堂々と言えるのは、そのヤキモチに深い意味はないということだ……と、マリアは一瞬で冷静になった。
しかし、ヤキモチを妬いてもらえたのは素直に嬉しく思える。
あとは……私にドキドキしてくれれば、お兄様に恋愛の意味で好きになってもらえるってことだよね?
マリアは、いつの間にかまた歩き出したグレイの顔をチラッと見上げる。
自分を抱えているというのに、その表情には照れた様子は微塵もない。
そんな男をどうやってドキドキさせればいいのか、そもそもドキドキさせることなんてできるのか……と、マリアは頭を悩ませるのだった。