心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「全部集めました! ……でも、もうこれで光の粒を保管できる瓶がなくなってしまいましたね」
若い研究員がそう言うと、奥で作業していた室長がマリアのもとにやって来た。
ここに来た時から気づいていたが、室長も他の研究員もいつも以上に目の下のクマがひどくなっている。
全員寝不足であろうことがよくわかるその顔に、マリアは眉をひそめた。
「マリア様、ありがとうございました。あとはこちらで治癒の薬にしておきます。また明日もお願いしてよろしいでしょうか?」
「もちろん。また明日、同じ時間に来るね」
ニコッと疲れた顔のまま見送ってくれる研究員達を見て、マリアは両手を前に突き出した。
「本当は……ちゃんと寝てほしいんだけど、きっとみんな言っても寝ないと思うから」
「え?」
パチッと目を丸くした室長や研究員達に、今度はマリアがニコッと微笑む。
研究員達が不思議そうな顔をしていると、突然研究室が黄金の光に包まれた。
光の粒ではなく、瓶に保管できない本物の光。
本来の聖女が発する治癒の光だ。
明るくて美しい黄金の光は、眩しくは感じない。
ポカポカと温かい空気に包まれたと思ったら、身体に感じていた不調や重さ、疲れがなくなっていくのを実感する。
「マリア様! これは……本物の……!」
「聖女様の光……!」
「身体の疲れがなくなった!」
ザワザワと、所々から歓喜の声が上がる。
目の下のクマがなくなり、顔色がよくなったことにも研究員同士で気づいていた。
「マリア様……どうして……」