心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 王太子の身分でなんて危険な行動を! と言いかけて、マリアはレオと目を合わせた。
 お互い口には出さないが、気まずそうな顔を見る限り考えていることは同じだろう。



 私達も、最後の遠征帰りに同じことしてお兄様に怒られたんだった……!



 人のことを言えた立場ではないが、王太子という身分に行き先が初めて訪れる友好国の王宮となったら話は別だろう──そう思い、マリアは1度止めた言葉を口にした。


「そんな危険なことをして、何かあったらどうするつもりだったのかな。それに、本当に……その人が……その……」

「マリアが言いたいことはわかるよ。数人の騎士と現れた人物を、すぐに王太子だと信じて大丈夫なのかって心配してるんだろ? その辺は、王宮側もしっかり調べた上で受け入れてるから平気さ」

「そう……」

「予定を崩されて、王宮側は今バタバタってわけだ」


 コソコソ話を終えて地下の階段から通路に出る。
 いつもならこのタイミングでエドワード王子が待っていたりするのだが、やはり今日は忙しいらしい。
 王子がいつも立っている柱の前には誰もいない。



 会えたら、この前のこともう1度謝りたかったんだけどな。



 そんなことを考えながら、その柱の横を通り過ぎた時──バタバタバタと走る足音が自分に近づいていることに気づき、マリアは音のするほうを見た。

 左からこちらに向かって走ってくる人物がいる。
 そう頭で理解した時には、すでにその人物はマリアのすぐ近くまで来ていた。



 ぶつかるっ!!


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