心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「あの、さっきの女性って奥様ですよね? 何か説明しなくていいんですか? 誤解されたのでは……」

「構いません。貴女の姿を一目見せておきたかっただけですから」


 そう冷たく言い放つジュード卿の後をついて行くと、なぜか全ての部屋を通り過ぎて外に出てしまった。
 このまま返されるのではと不安になったエマは、恐る恐るジュード卿に声をかける。


「あ、あの……どこに行くのですか?」

「貴女と聖女様の家ですよ」

「私達の……家?」


 ジュード卿は足を止めることなくエマの質問に答えた。
 彼の答えの意味が分からなかったエマは、暗闇の中に見えてきたもう一つの屋敷に気づき、目を丸くした。
< 65 / 765 >

この作品をシェア

pagetop