心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「その瞳……もしかして、アナタは聖女様ですカ?」
「あ、はい……」
目を逸らすことなく、ジーーッと凝視される。
そのあまりにも強い目力に、マリアは思わず怯んでしまった。
マリアの好きな夜空のような瞳だからか、ずっと見ていると吸い込まれてしまいそうだ。
遠目からジーッと見られることはあったけど、こんなに近くでここまで見られるのは初めてかも。
みんな聖女の黄金の瞳に夢中になるが、目の前にいる状態で凝視してくる者はいない。
遠慮がないのか、好奇心旺盛なのか、自分の思うまま素直に行動する人なのか……ハリムの堂々とした行為にマリアもレオも驚いていた。
「あ、あの……」
「あっ。失礼シマシタ。あまりにも綺麗な瞳だったカラ……」
「あーーっ!! いた!!」
ハリムがニコッと微笑んだ時、彼の後ろから叫び声と共に騎士が2人現れた。
1人はこの王宮の騎士で、もう1人はハリムと同じ格好をした騎士である。
褐色肌に銀髪、たくましい身体はハリムと同じだが、瞳の色は黒く髪も短髪だ。
どうやら2人でハリムを探していたらしい。
「どこ行ってたんですか? なかなか戻ってこないから心配して……って、マリア様!? どうしてこちらに!?」
王宮の騎士は、ハリムの前に立っていたマリアを見て驚いている。
何か問題は起きていなかったかと、不安そうな顔でマリア、レオ、ハリムの顔を見回した。