心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 マリアが不思議そうに尋ねると、レオはさらに眉をくねらせて顔を曇らせる。


「体格はそうなんだけど、雰囲気というか行動というか……」

「?」


 行動はともかく、人懐っこい犬のような雰囲気は騎士であるレオに似てる──と言いかけて、マリアは黙った。
 昔からレオの勘は変に当たるんだ、とグレイがいつか言っていたのを思い出したからだ。


「とにかく、俺がいない時に2人きりになったりしないでね」

「大丈夫よ。明日のパーティーではエドワード様もいるし」

「うん……」


 顔色の悪いレオを見て、マリアもその胸に小さな不安を抱く。
 その時、レオが突然何かに気づいたかのように背筋をピンと伸ばした。
 そんなレオの視線がマリアの背後に向いていると気づき、マリアは振り返って後ろを確認する。


「あっ」

「マリア!」


 そこには、こちらに向かって走ってくるエドワード王子がいた。
 余程急いでいたのか、顔には汗がにじんでいる。


「よかった。まだ帰っていなくて」

「エドワード様。そんなに急いでどうしたの?」

「ちょっと……マリアにどうしても早く伝えておかなければいけないことがあったから」


 王子は息を整えながら、マリアとレオを交互に見る。
 何かを察したレオは、静かに2人から離れて声が届かない場所に移動した。話し声は聞こえないが、姿は見える場所だ。



 どうしても早く伝えておかなきゃいけないこと?


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