心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアの表情を見るのが不安なのか、エドワード王子はマリアから目をそらす。
予想外の報告に、マリアは自分から視線を外している王子を凝視した。
パーティーの間は、エドワード様の婚約者のフリをする……?
戸惑いつつも、マリアは王子の言っていることを理解できていた。
もしも本当に王太子に誘われることがあった場合、王子の婚約者だという立場なら断りやすい。
そう頭ではわかっていても、マリアはすんなり承諾することができなかった。
パーティーにはお兄様も来るのに。お兄様の前で、エドワード様の婚約者として振る舞うなんて……。
マリアの不服そうな顔をチラッと見た王子は、ムッとして強気な声でキッパリと言い切った。
「これはもう決定事項だぞ」
「……うん」
「今回はまだ婚約者のフリだが、俺は本当にマリアを婚約者にするつもりだからな」
「!」
あきらかに落ち込んだ様子のマリアに苛立ったからか、エドワード王子は突然強引な言葉を放った。
その言葉に、マリアは自分が王子に告白されていた事実を思い出す。
そして、その頃の自分はまだグレイへの恋心を自覚する前だったということも──。
どうしよう。エドワード様に、お兄様が好きだって言ったほうがいいのかな?
そんなことを伝えたなら王子を傷つけてしまう……と思うと、マリアはすぐに口を開くことができなかった。
しかし、もう自分の中で答えが出てしまっている以上、早く伝えたほうがいいのではないかとも思える。
私は……伝えたい。
だって、きっとこの気持ちは変わらないから。