心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「エドワード様。私、お兄様が好きなの……恋愛の意味で。だから、本当の婚約者にはなれません」
「……はぁ!?」
突然の報告に、エドワード王子は裏返った声を出した。
足の力が抜けたのか、ガクッとその場にしゃがみ込む。
そして片手で頭をガシガシと掻き、目を瞑って大きなため息をつきながらボソッと呟いた。
「……なんで気づいちゃうんだよ」
「えっ? エドワード様、知ってたの?」
「当たり前だろ! ずっと前から知ってる!」
「ええっ!?」
なんで、いつから、最近自覚したばかりなのにずっと前からってどういうこと、と聞きたいことはたくさんあったが、怒りながらもショックを受けているような王子の表情を見てマリアは尋ねるのをやめた。
王子は立った状態のマリアを見上げ、少し不貞腐れた顔で言い放つ。
「俺は諦めないからな」
「!」
「そんなことくらいで諦められるなら、10年前にやめてる」
「……でも」
私の気持ちは変わらない──という言葉が続くとわかったのか、王子はスクッと立ち上がった。
強気な表情の中にうっすらと見える悲しげな瞳。その瞳に見つめられて、マリアの言葉が止められる。
エドワード王子はフッと柔らかく笑うと、「じゃあな」と言ってその場から去っていってしまった。
……言ってよかったのかな?
王子が去ってすぐにレオが近くにやって来たが、特にどんな話をしたのかは聞いてこなかった。
会話している2人の様子を見ていたレオは、何かを察しているのかもしれない。
自分の行動に自信が持てないマリアは、レオに話すこともなくそのまま王宮を後にした。