心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「あのね、私……そう言われた時すごく胸が痛かったの。私はきっとエドワード様を好きになることはないんじゃないかなって思うと、なんだか申し訳ないっていうか……悲しいっていうか……」
「マリア様……」
「私が悲しいって思うのはおかしいよね」
好きになってもらえないほうが──エドワード王子のほうがずっと悲しいはず。
それなのに、なぜ気持ちを拒否した自分が悲しくなるのか、マリアにはわからなかった。
マリアのたどたどしい説明で理解してくれたのか、エミリーはニコッと優しく微笑む。
「おかしくないですよ。マリア様がエドワード殿下のことを大切なご友人だと思っているからこそ、傷つけてしまうことに胸を痛めてしまうのです」
「私が傷つけた張本人なのに?」
「そうですね。それが恋愛の難しいところです。たった1人しか受け入れられない。どんなに人として好きでも、大切な方でも、そのたった1人以外の方にはお断りしなければいけないんですから」
「…………」
たった1人の好きな人以外は……受け入れられない、かぁ。
「……恋愛って残酷だね」
「そうですね」
エミリーはそう頷きながら、マリアの頭にティアラを合わせている。どの位置に置くかの調整をしているようだ。
マリアは頭の上をいじられている間、ボーーッとしながらグレイを思い浮かべた。
もしも自分とエドワード王子のこの状態が、グレイとの関係に置き換えたらどうなるのかを想像していたのだ。
もし私がお兄様に「他に好きな女性がいる」なんて言われたら、エドワード様みたいに「諦めない」って言えるのかな?
その場で泣いてしまいそう……。