心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「どうした、マリア?」
グレイがマリアの身体を支えて顔を覗き込んでくる。
余計に胸が苦しくなったマリアは、目をつぶってグレイから顔をそらした。
「マリア? 大丈夫か? レオ、すぐに医者を──」
「大丈夫だよ、グレイ。慣れれば落ち着くはずだから」
「はあ!? 何を言ってるんだ。こんなに苦しがっているのに。エミリー、医者を──」
「あ、あの、私も大丈夫だと思います」
「!?」
苦しがっているマリアを見ても平然としている2人の返答に、グレイは理解不能といった顔をした。
まさか『ただときめいているだけ』とも言えず、レオは困った表情を浮かべてからグレイとマリアの間に割り込んでいく。
「とりあえず、落ち着かせるためにも1度離れようか」
「支えていないと倒れるかもしれないだろ。どけ」
「グレイが支えてるほうが倒れちゃうよ」
「はあ?」
そんな2人の会話を聞きながら、マリアは必死に呼吸を整えていた。
落ち着いて、落ち着いて……!
レオのおかげでグレイが離れてくれたので、なんとか深呼吸ができる。
恋とは尊いものではなく、早死にさせるものではないかとマリアは思った。
心臓の動きが激しくて、心も身体も一気にグッタリと疲れてしまう。