心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「それなら、俺も同じかもしれない」
「…………え?」
「さっき、部屋に入ってマリアを見た瞬間にあまりに綺麗で驚いた。そのあとなぜか、胸が締めつけられるような痛みを感じたんだ。何か病気なのかと思ったが……マリアと同じ症状なのかもしれないな」
ふっと柔らかく笑うグレイを、マリアは呆然としながら見つめる。
私と同じ症状って……それじゃ恋ってことになっちゃうけど……!?
ま、まさかね……!?
とんでもないことをしれっと打ち明けてくるグレイに、マリアの心は翻弄させられっぱなしだ。
顔に照れが一切感じられないので、自惚れていいのか勘違いしているのか判断がつかないところも厄介である。
と、いうか……今、お兄様に綺麗って言われた? 綺麗って……!
あれ? 今まで綺麗なんて言われたことあったっけ??
「……マリア。顔が真っ赤だが、熱でもあるのか? やはり病気──」
「違うっ。だから、これもお兄様のせいなのっ」
「え???」
グレイの本気で何も理解していない顔が、憎らしくもあり愛おしい。
マリアは赤くなった頬を両手で隠すようにして、真っ直ぐに見つめてくるグレイから視線を外した。