心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
キィ……と扉が開けられ、王子とマリアの2人は中へと案内された。
この部屋は、陛下が王太子のために用意させた広く立派な部屋である。
中にいる人達はみんな褐色肌に銀髪。入口から遠い窓際に立っている、1人だけ派手な服装をした男性が王太子なのだとマリアはすぐにわかった。
そして、それが誰なのかも──。
「聖女様!」
ニコニコと笑いながら駆け寄ってくるのは、間違いなくあのハリムだ。
驚く気持ちよりも、マリアはやっぱり……と呆れる気持ちが多かった。
「ハリム……いえ。アドルフォ王太子殿下……」
「!?」
王太子とマリアの反応を見て、エドワード王子がギョッと目を見開いた。
そんなエドワード王子の反応に気づいていないのか気づかないフリしているのか、王太子はマリアにニコッと微笑む。
「騙してごめんネ」
「いいえ。こちらこそ、失礼な態度をとってしまって申し訳──」
「ああっ! やめてよ! 今までみたく、フツウに話して」
「ですが──」
「あの! お二人は知り合い……なのですか?」
マリアと王太子の会話に、少し青ざめた顔のエドワード王子が入ってくる。
王子の眉はヒクヒクと動いていて、この状態を不満に思っているのがマリアにはわかった。
自分が説明したほうがいいのかと迷っていると、王太子が悪びれた様子もなしにエドワード王子に答える。
「毎日会っていマシタ! 聖女様、とてもカワイイ! 私は聖女様が大好きデス」
「なっ……!?」
素直な王太子の返事に、エドワード王子がカッと眉をつり上げる。