心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
あ、あれ? 今この状況で、それ言う必要あるかな?
エドワード様すごく不機嫌そうな顔してるし、何か誤解してるんじゃ……。
「あの、たまたま通路で出会って、それから毎日挨拶をかわしただけですよ」
そう説明すると、エドワード王子がジロッとマリアに視線を向けた。
ここに他国の方々がいなければ、きっといつものように怒られていたことだろう。
「相手がアドルフォ王太子殿下だと、気づいていなかったのか?」
「はい。騎士の格好をしていたので」
「…………ああ、それでか」
思い当たることのあるエドワード王子は、今度は王太子に向き直った。
おそらく睨みつけているつもりはないのだろうが、元々目つきの悪いエドワード王子の眼光は鋭い。
「あなたはマリアが聖女だと知っていて近づいたのですか?」
「もちろん。黄金の瞳を見れば、スグにわかるよ。あっ、でも変なことはしてないカラ、安心してください」
「当たり前です!」
変なことはしてない──にエドワード王子がすぐに反応する。
そしてグイッとマリアの肩を抱き寄せるなり、警告するかのように真剣なトーンで王太子に言った。
「マリアは私の婚約者です。絶対に手を出さないでくださいね」
「!」
王太子殿下に対する失礼な物言いに、部屋にいるガブール国の人達がムッと表情を曇らせる。
しかし、言われた本人である王太子は目を丸くしたままエドワード王子とマリアを交互に見た。
どこか楽しそうな顔だ。