心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
大きな声出しちゃったから、みんなこっち見てる……。
フランシーヌ様に悪いことしちゃったかも。
申し訳ないと思っているマリアとは違い、隣に立つエドワード王子からはスッキリとした爽やかなオーラを感じる。
今まで黙っていた王子は、小さな声でマリアに話しかけた。
「きっぱり断ってくれて助かったぞ、マリア。あの女がパートナーになるところだった。ところで、本当に体調は大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。それより、そんなにフランシーヌ様が嫌なの?」
「話をしたくないほどに嫌だ」
「えぇ……!?」
実際に、王子はフランシーヌがいる間は一言も喋っていなかった。
もしも本当にマリアが連れて行かれそうになったなら声を出したのかもしれないが、しばらく様子見しているくらいには本当に話したくないのだろう。
エドワード様ってば、まさかこんなにフランシーヌ様のこと嫌がってたなんて。
まぁ、私もちょっとだけ苦手だけど……。
チラリとフランシーヌに視線を送ったマリアは、壁際から物凄い目つきで睨まれていることに気づき、ブルッと肩を震わせた。
こ、怖い……!!
そんな鬼の形相をしている彼女に気づいていないエドワード王子は、ソワソワしながらマリアをダンスに誘ってきた。
周りに聞かれるのが恥ずかしいのか、やけに小さい声になっている。