心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「どうする? 俺達も踊るか?」
「う……ん。ちょっと今は……」
「顔色が戻るまで待ったほうが良さそうだな。別室に行くか?」
「私が別室に行ったらエドワード様が1人になっちゃうけど平気なの?」
マリアの言葉を聞いて、エドワード王子の表情が固まる。
その鋭い視線の先にいるのはフランシーヌ様だ。
マリアがいなくなったなら、彼女はすぐに王子のもとにやってくるだろう。
「それは……困るな」
あまりにも素直な反応に、マリアはプッと吹き出しそうになってしまった。
ふふっ。なんだか女性に怯えてるみたいでかわいい。
鬼神とも呼ばれる強く男らしい第2王子様が、か弱い令嬢を避けているなんて誰も想像できないだろう。
グレイとパートナーの様子を見て痛んでいた胸が、少しだけ軽くなったようにマリアは感じた。
「ね? だから大丈夫。体調も問題ないし。それより、ちょっと甘いものが食べたいんだけど……行ってきていいかな?」
「お前……またケーキか?」
急に呆れたような目で見られ、マリアはムッとしながら言い返す。
「またって何? まだ今日は食べてないよ」
「はいはい。危ないから俺も一緒に──」
「エドワード!」
その時、突然やってきた人物が勢いよくエドワード王子の首に腕を絡ませてきた。
王子の首がグキッと変な音を響かせる。
この国の第2王子にこんなことができる人物は限られている。
マリアが気づいた時には、2人は王子の学友5人に囲まれていた。