心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「久しぶりだな!」
「元気だったか?」


 楽しそうな雰囲気の中、友人達はチラチラとマリアに視線を送ってはいるものの話しかけてはこない。
 数年前に、直接マリアに話しかけるのは禁止だと王子に言われたからだ。
 それを知っているマリアは、少しずつ後ろに下がりながらエドワード王子に声をかけた。


「……じゃあ、私はあっちに行ってるね」

「待て! 1人だとあの王太子に──」

「まだ会場に来てないから平気だよ。少し食べたらすぐ戻ってくるから」

「あっ……!」


 王子の返事も聞かず、マリアはサッとその場から離れた。



 あのお友達と私が話すと、エドワード様はすぐ不機嫌になるんだよね。
 お友達が怒られちゃうし、離れるのが1番ね。



 人ゴミの中をスーーッと通り抜け、マリアはケーキなどの甘いお菓子が置いてあるテーブルまでやってきた。
 パーティーではダンスやおしゃべりに夢中になっている人が多く、実はこういった場所にはあまり人がいないのだ。



 わぁっ! 美味しそう!



 1人でのんびりケーキが食べられると顔を綻ばせたマリアは、背後から聞こえてきた声に思わず「うっ」と呻き声を発してしまった。
 なぜなら、さっきまで正反対の場所にいたはずのフランシーヌだったからだ。


「マリア様。体調はもうよろしいんですの?」

「……はい。……フランシーヌ様」


 なんでここにフランシーヌ様が!? と、マリアは心の中で問いかけた。

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