心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「まさか会場に入って間もないというのに、もうエドワード殿下から離れてお食事を?」
「……は、はい。ちょっと甘いものが食べたくて」
「あら。それはいけませんわ、マリア様。殿下のパートナーである以上、ご自分の要望など優先してはいけませんことよ。まず第一に考えなくてはならないのは、殿下のことであり──」
うう……お説教が始まっちゃった……。
令嬢としての教養があまりないマリアは、こうして昔から嫌味ばかり言われてきた。マリアがフランシーヌを苦手な理由の一つでもある。
少しでも反抗すると倍になって返ってくるので、マリアはただ黙って聞いているのが1番被害がないことを学んでいた。
あーあ……早くケーキが食べたいのに…………ん?
身動きせずに話を聞いていたマリアは、こちらに近づいてくる人物に目がいった。
フランシーヌの様子を見て避ける人が多い中、あえてこちらに向かってくる人物──ピンク色の髪をした、可愛らしいご令嬢の姿が。
「何してるんですかぁ〜?」
「……っ」
この方は……お兄様のパートナーの方!!