心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
義理の姉って……それって、お兄様と結婚するかもしれないってこと?
マリアは不満そうに眉をくねらせたが、2人はお互いを見つめ合っていてそれに気づいていない。
フランシーヌは至極不快そうな顔で話を続けた。
「だとしても、マリア様と殿下のことはあなたに関係ありませんわ」
「それが、あるんですぅ。マリア様が結婚しないと、いつまで経ってもグレイ様がご自分の結婚に興味を持ってくださらないみたいなんですものぉ」
べティーナの言葉を聞いて、さらにフランシーヌが軽蔑の色を濃くする。
「……何よ、それ。そんな理由で殿下とマリア様を結婚させようと? なんとも自分勝手な理由ですこと」
「あら。フランシーヌ様が反対される理由だって、自分勝手なものではないのですかぁ?」
バチバチバチッ
なぜか、マリアにはその場で火花が散るような音が聞こえた気がした。
ここは華やかなパーティー会場だというのに、まるで魔物と戦う森の中のような緊張感が漂っている。
こ……こわいっ!
助けを求めて周りを見回したけれど、いつの間にかマリアたちの周りからは人がいなくなっていた。
関わりたくないけど気になる──そんな人が多いのか、少し離れたところからこちらをチラチラ見ている。