心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
どうしよう……私も離れたいけどダメだよね?
早くこの話を終わらせたほうがいいのかな。
2人の間に入るのは怖いけれど、終わらせるためには仕方ない。
マリアは勇気を出して静かに睨み合っている2人に話しかけた。
「あの、私は……」
エドワード様とは結婚しません。
そうマリアが言いかけた瞬間、睨み合っていた令嬢2人が勢いよくマリアを振り返った。
わっ!
そのあまりの迫力と見開かれた目の圧に、マリアはビクッと肩を震わせる。
「マリア様はエドワード殿下との結婚は考えていらっしゃらないのですよね!?」
「え、あ、は……」
「でもっ。いつまでも結婚しないわけにはいかないでしょう? だったら早くエドワード殿下と婚約されたほうがよろしいですよぉっ」
「い、いえ。でも……」
「マリア様が望んでいないのでしたら、無理に結婚される必要はございませんわっ」
「あ、あの……」
「女の幸せは結婚ですよぉ! マリア様っ」
「え、えぇ……」
マリアが何かを答える前に、もう片方の令嬢が口を出してくる。
肯定も否定もできずに困っていると、令嬢2人の頭の上からひょっこりと男性が顔を出した。
褐色肌に銀色の髪をした男性──アドルフォ王太子だ。