心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ハリム! じゃなくてアドルフォ王太子!
どうしてここに!?
「聖女様はもう王子と婚約してるんジャなかった?」
「!」
突然の声に振り返ったフランシーヌたちは、アドルフォ王太子を見て慌てて頭を下げた。
その風貌で、一瞬でアブール国の王太子だと悟ったらしい。
咄嗟のことだというのに正しい判断力で美しく礼をしている2人を見て、マリアは純粋にフランシーヌ達を尊敬した。
すごい……!
あっ、マリアもやったほうがいいのかな?
あわあわとしているマリアに、アドルフォ王太子がもう一度同じ質問を繰り返す。
「聖女様は王子と婚約してるんだよネ?」
「あ……」
その質問で、マリアは今日エドワード王子の婚約者として挨拶したことを思い出した。
そうだった! ウソってバレたら大変!
「し、してます!」
「!?」
マリアの返事を聞いて、フランシーヌとべティーナがギョッと目を見開く。
何か言いたそうな視線をマリアに送りつつも、王太子と聖女の会話を邪魔するつもりはないらしい。
2人は黙ったままその場におとなしく立っている。