心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「なるホド。血の繋がらナイ兄妹……ネ」
「……なんでしょうか?」
「イエ! なんでもナイです」
意味深な言い方をしたアドルフォ王太子に、グレイはジロッと鋭い視線を向ける。
そんな不躾な態度に苛立つ様子もなく、王太子はニコッと微笑むなりホールの真ん中に向かって歩いていってしまった。
顔の整った異国の王太子に、令嬢達は頬を染めながら熱い視線を送っている。
なんだ、アイツ……。
すぐ近くにいたはずのフランシーヌはいつの間にかいなくなっていて、この場にはグレイとピンク髪の令嬢の2人だけが残された。
アドルフォ王太子と話している間も、彼女はずっと腕にくっついたままだった。
グレイはげんなりとした顔でため息をつく。
ああ……マリアがいなくなると、また心が暗く淀んでくるな。
なんとも気持ちの悪いこの右腕を切り落としてやりたい……。
そんなことを頭の中で考え、グレイは右腕を錘のように感じながらまた壁際に向かった。