心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない


 控え室ってどこだろう?



 マリアが周りをキョロキョロしていると、太い柱の陰にガブール人のメイドが立っていた。
 マリアたちに気づくなり、ペコッとお辞儀をしている。



 ん? この人……私たちを待ってたの?



「倒れたご令嬢はガブール国の方なのです」

「あ。そうなのですね」


 マリアの考えを読んだかのように、ピッタリのタイミングでフランシーヌが説明してくれる。
 そのご令嬢はすでに控え室から移動しているらしく、マリアたちを案内するために待っていてくれたようだ。


「こちらデス。聖女様ダケお越しくだサイ」

「え……でも」

「わたくしは大丈夫ですわ。あまり無防備な姿は人に見せたくないものですのよ。マリア様だけで行ってさしあげて」

「……わかりました」


 そういうものなのかな? と思いつつ、2人に言われたならそれに従うしかない。
 マリアはフランシーヌに軽く挨拶をしてメイドに案内してもらうことにした。

 色々な部屋を通り過ぎ、ガブール国の方々に用意された部屋に向かう。
 パーティー会場からは離れたこともあり、マリアたち以外には誰もいないし廊下はとても静かだ。
 
 落ち着いて歩くメイドの背中を追いながら、マリアは変な違和感に襲われた。



 この人……なんで急がないんだろう?


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