心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
グレイが好奇心からイザベラを疑い始めて数ヶ月後、イザベラは夜になると頻繁に夜会へ出かけるようになった。
そのまま朝まで帰ってこないなんてことも日常茶飯事である。
グレイはとうとう、別邸への侵入を決意した。
あそこには何かがある!
その日の夜。
イザベラが夜会に出かけたのを確認したグレイは、静かに屋敷を抜け出して庭を走り抜け、目当ての別邸へとやってきた。
窓から見えていたジュード卿と女の暮らしていたこの別邸。
近寄るのも苦痛だったため、グレイがこの場所に来るのは実は初めてであった。
ここの鍵は、事前にイザベラの部屋から盗ってきている。
金庫に隠すこともなく乱雑にテーブルの上に置かれていたため、簡単に手に入った。
昔のイザベラなら考えられないほどの怠惰だ。
見た目が戻ってきていても、中身は昔には戻っていないのだと、グレイは改めて気づかされた。
ガチャガチャッ