心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイが好奇心からイザベラを疑い始めて数ヶ月後、イザベラは夜になると頻繁に夜会へ出かけるようになった。
 そのまま朝まで帰ってこないなんてことも日常茶飯事である。

 グレイはとうとう、別邸への侵入を決意した。
 


 あそこには何かがある!



 その日の夜。
 イザベラが夜会に出かけたのを確認したグレイは、静かに屋敷を抜け出して庭を走り抜け、目当ての別邸へとやってきた。

 窓から見えていたジュード卿と女の暮らしていたこの別邸。
 近寄るのも苦痛だったため、グレイがこの場所に来るのは実は初めてであった。

 ここの鍵は、事前にイザベラの部屋から盗ってきている。
 金庫に隠すこともなく乱雑にテーブルの上に置かれていたため、簡単に手に入った。

 昔のイザベラなら考えられないほどの怠惰だ。
 見た目が戻ってきていても、中身は昔には戻っていないのだと、グレイは改めて気づかされた。

 ガチャガチャッ
< 7 / 765 >

この作品をシェア

pagetop