心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
93 ピュアなマリアと誘惑する王太子
……あれ? なんで私、ベッドに寝てるんだろう?
仰向けの状態で横になっているマリアの上には、ニコニコと嬉しそうに笑っているアドルフォ王太子がいる。
マリアのすぐ隣に寝転がっているが、両手をマリアの顔の横に広げているため覆い被さっているような態勢だ。
今は王太子が腕を伸ばしているおかげで少しだけ距離があるけれど、それでも普段より顔が近くにある。
ベッドに押し倒されたマリアは、ポカンとしながら王太子を見つめた。
「あの……アドルフォ王太子殿下」
「何?」
「意識不明のご令嬢はどこですか?」
「!」
マリアの質問に、王太子は目を丸くしてからブハッと笑い出す。
「あはははっ。コノ状況で最初に聞くコトがそれ?」
「だって、早く治さないと手遅れになっちゃいます!」
「大丈夫だヨ。そんな令嬢はイナイ。それはウソだから」
「ウソ?」
最初に、倒れた令嬢のことを教えてきたのはフランシーヌだ。
そんな令嬢はいないと言うのなら、フランシーヌも嘘をついたことになる。
なぜフランシーヌが嘘をつき、そしてなぜアドルフォ王太子がそれを知っているのか。
マリアの頭の中は???だらけで理解できなかった。