心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ふぅ……とマリアが小さなため息をついたとき、やっと喋られるようになった王太子がマリアの耳元あたりの髪に触れた。
「本当におもしろいネ。聖女様は。フツウはこんな状況になったらみんな顔を赤くするのに」
「こんな状況?」
「男と2人キリでベッドに横になったら、色々と想像しちゃうデショ?」
「何をですか?」
「…………」
キョトンとするマリアの返答に、王太子が笑顔のまま固まる。
その反応を見て、マリアは自分の感覚が何かおかしいのかと心配になった。
え? 何? 男の人と2人きりでベッドに横になったらなんなの?
想像するって、何を?
一所懸命考えてみても、マリアには答えがわからなかった。
そのとき、グレイの部屋で過ごした夜のことを思い出す。
あ……そういえば、お兄様も昔は一緒に寝てくれたのに最近はソファで寝ようとしてた……。
もしかして、それも何か関係あるのかな?
内容まではわからないはずだが、マリアが何かをぐるぐると頭の中で考えているのは伝わったらしい。
王太子が先ほどよりも顔を近づけてきた。