心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「聖女様は思っていたヨリもずっと純粋みたいダネ。モット欲しくなっちゃったヨ」
「欲しく……? ……あっ!」
マリアはエドワード王子から聞いていた話を思い出した。アドルフォ王太子は女好きでマリアを狙っている──と。
そのために、今日はエドワード王子と婚約していると嘘をついているのだから。
それを知ってても言ってくるなんて……ちゃんと断らなくちゃ!
「私はエドワード様の婚約者だから、あげられませんよ」
「でも、聖女様はアノ王子が好きじゃナイんだろう?」
「えっ」
なんでわかったの!?
あっ、でも誤魔化さないと!
「す、好きですよ」
「ははは。聖女様はウソがヘタだネ。だって、聖女様が本当に好きなのはアノお兄様……なんデショ?」
「!!」
あまりに驚きすぎて、マリアは否定するのも忘れて目を見開いた。
王太子にグレイの話をしたことはない。王太子がグレイを見たのはついさっきで、ほんのわずかな時間だったはず。
それなのにどうして自分の気持ちを知っているのかと、マリアは不思議で仕方なかった。
なんで……?