心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 自然と足がレオの出て行った扉に向かう。
 その扉から出ようとした瞬間、中に入ってこようとしたレオと思いっきりぶつかってしまった。


「いてっ……あっ、グレイ!」

「レオ。マリアは?」

「それがいないんだ。令嬢たちの控え室のほうに向かったんだけど、通路には誰もいなくて。エドワード殿下にマリアがどこに行ったのか聞こうと思って」

「…………」


 グレイの中の嫌な予感が大きくなっていく。
 レオがエドワード王子のところに話に行っているのを、グレイは険しい顔で見つめていた。

 しばらくして、レオだけでなく王子までもがこちらにやってきた。
 普段ならできるだけ顔を合わせたくない相手だが、今はそんなことを言っている場合ではない。


「マリアは令嬢の控え室に向かったらしい! 倒れた令嬢がいたとかで……!」


 今エドワード王子から聞いたばかりの話を、レオが説明しながら駆け寄ってくる。


「何? お前はその方向に行ったんだろう? 誰もいなかったと言っていたじゃないか」

「本当にいなかったよ。もし2人がそっちに向かってたなら、絶対に追いついてたはずだから」


 グレイとレオの話を聞いて、エドワード王子の顔色が曇る。
 いつもの生意気な態度も威圧的に見せようとする様子もなく、極々自然に2人の会話に入ってきた。


「じゃあ、マリアは控え室のほうには行ってないってことか?」

「そういうことになりますね」

「……フランシーヌ嬢を探そう」

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