心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
なんだと!?
あの男、そこまでしてマリアを……!?
エドワード王子の気迫に圧倒されたフランシーヌは、普段の威厳ある姿とは別人のように怯えている。
グレイが王子以上の恐ろしい目で睨みつけているからか、彼女はチラッとグレイを見たきり二度と顔を上げなかった。
「それで、その部屋はどこだ!?」
「……わかり、ません……」
「わからない!? なぜだ!?」
「アドルフォ王太子殿下のメイドが待っていて、マリア様だけを連れていかれたので……」
フランシーヌの答えを聞いて、レオが彼女の歩いてきた方向に走り出す。
闇雲に捜すにはこの王宮は広すぎる。
少しでも何か情報のほしい王子とグレイは、フランシーヌから知っている限りの情報を聞き出してからレオのあとを追った。
勝手な行動に出たアドルフォ王太子に対して怒りはあるが、それ以上にグレイはよくわからない不安に襲われていた。
今、マリアとあの男が2人でいるのか……?
怒りよりも不安が勝ることなんて、これまでのグレイにはなかった。
苛立ちと焦りを同時に感じながら、グレイはエドワード王子と共にマリアを捜した。