心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
顔を手で覆いながら真っ赤になって叫ぶマリアを、ポカンとした顔で見つめる王太子。
このマリアの思考回路だけは予想外だったらしい。
監禁されていた檻から出て以来、人前で着替えたり裸になることに慣れてしまったマリア。
もちろん男性の前ではまだ脱いだことはないけれど、自分の裸を見られることよりも他の人の裸を見るほうが抵抗がある。
「どうしても裸にならなくちゃいけないんですか?」
「ウーーン……。まあ大人じゃナイとまだ恥ずかしいカモねぇ〜」
「!」
裸にならないと、大人になれない……!?
葛藤しているマリアの気持ちに気づいているのか、アドルフォ王太子がチラッと横目でマリアの様子を確認している。
ハッキリと答えを出せないマリアに、もう一押しの言葉を投げかけてきた。
「じゃあ練習すればイイんじゃない?」
「練習?」
「そう! 俺をお兄サンだと思って練習してみようヨ」
ニコッと笑顔を作った王太子が、両手でマリアの手をギュッと握った。
自分に関係ないことだというのに、無知なマリアのために協力を申し出てくるアドルフォ王太子。
マリアはそんな王太子を、なんて親切な人なんだろう……と感心した。