心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
狭い部屋の中、マリアは王太子と自分の2人だけだと思っていた。
この騎士がどこに隠れていたのかも気になるが、今は激しくドアノブをガチャガチャ動かしている人物も気になる。
なっ、何? 誰?
手を掴まれて押し倒されているというのに、マリアは扉から目が離せなかった。
何が起きているのかを察したのか、アドルフォ王太子が「もうバレちゃったカ」と残念そうに呟く。
そのとき、ドアノブの音と共にエドワード王子の声が聞こえた。
「マリア!! いるのか!?」
「エドワード様!?」
「……っ! 声がしたぞ! マリアはここだ!」
王子の叫びが聞こえた瞬間、バンッと扉が破壊される。
壊れた扉の向こうに立っているのは、エドワード王子とレオ、そして──グレイだ。
「お兄様っ!?」
マリアの呼びかけにグレイは答えない。
3人とも、部屋の中の状況を見て固まっているのだ。
アドルフォ王太子に無理やり押し倒されているマリアの姿を見て──。