心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
96 怒るグレイとエドワード王子
扉を破壊し、部屋に入る前で固まっているグレイとエドワード王子。
2人とも、人間味のない冷めた表情でアドルフォ王太子を見ている。その暗く据わった目は、チラッと見ただけでも背筋が凍るほどに恐ろしい。
そんな2人のうしろに立っているレオだけが、「マリア!」と名前を呼んで部屋の中に入ってきた。
「レオ……」
「大丈夫!?」
「ん? うん」
レオがベッドに近づく前には、アドルフォ王太子は掴んでいた手を離してマリアの横にあぐらをかいて座っていた。
焦った様子などもなく、ニコニコしながら入口に立つ2人を見ている。
マリアはなぜレオがこんなに自分を心配しているのか、なぜ扉を開けてもらうのを待たずに破壊したのかわからずに混乱していた。
私が約束を破って王太子と一緒にいたから怒ってるのかな?
そんな不安を抱いてしまうほど、グレイとエドワード王子からは不穏すぎるオーラが出ている。
レオがマリアを起き上がらせた瞬間、2人が部屋の中に足を踏み入れた。
「グレイッ! 待って!」
グレイの視線がマリアではなくアドルフォ王太子に向けられていることに気づいたレオが、両手を広げてグレイの前に立ち塞がる。
エドワード王子の前には先ほど突然現れたガブール国の騎士が立っていた。
「どけ」