心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 凍りつくような低く恐ろしい声で命令されたレオは、一瞬ビクッと肩を震わせたもののすぐにまたキッと目を吊り上げる。


「ダメだよグレイ! 相手は王太子! 落ち着いて!」

「そんなの関係ない」

「関係あるよ!」


 そんなやり取りをしている横では、エドワード王子が目の前にいる騎士ではなくアドルフォ王太子に向かって話しかけていた。


「これはどういうことですか?」

「コレって? ソノ騎士のコト? 聖女様のコト?」

「どちらもです」


 激昂せずに静かに怒りを溜めているエドワード王子と、その怒りに気づいていながらとぼけているアドルフォ王太子を、マリアはオロオロしながら見つめた。



 お兄様もエドワード様もすごく怒ってる……!



 2人の怒りの矛先は、マリアではなくアドルフォ王太子らしい。
 どう説明すればいいのか、この空気の中自分が会話に入っていいのか、マリアはわからずに戸惑っていた。

 そんな怒りを向けられているアドルフォ王太子は、変わらず笑顔のままだ。

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