心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「聖女様にお話があって、来てもらったダケだヨ」
「話? こんな場所に嘘をついて呼び出して、ベッドに押し倒したと?」
「アレは偶然ですヨ。証拠に、聖女様は俺を怖がってナイでしょう?」
もし王太子がマリアを傷つけていたなら、もっとグレイたちに助けを求めているはずだ。
マリアが普通に王太子の横に座っていることで、その可能性が少ないことはもちろんみんなわかっている。
だからこそ、なんとかここまで落ち着いていられるのだ。
しかし、部屋に入ったときの状況を考えると完全に無罪とは言えないだろう。
偶然あんな状態になったと言っているが、グレイもエドワード王子もそんな話を微塵も信じてはいない。
「そうだとしても、俺の婚約者と勝手に2人きりになられては困ります。マリア。こっちに来い」
「あ、はい……」
エドワード王子に命令されて、マリアがベッドから下りようとした瞬間──アドルフォ王太子に腕を引かれ、頬にチュッとキスをされた。
えっ。
「ああっ!?」
エドワード王子の大声と共に、ドンッと人を突き飛ばした音が部屋に響く。
思いっきりレオを突き飛ばしたグレイが、ベッドにかけ寄り素早くマリアを抱き上げた。