心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアはやけに緊張した顔でグレイの隣に座った。
「違う。ここに横になって」
「えっ……」
真顔のグレイの要望に、マリアはボッと顔を赤くする。
のそのそとベッドに横になったマリアに布団をかけると、グレイは子どもを寝かしつける親のように布団の真ん中あたりをポンポンと軽く叩いた。
その後スクッと立ち上がって先ほど座っていた椅子に向かおうとしていたので、マリアはすかさずに起き上がった。
「あ、あのっ。お兄様、これは一体……」
「マリアは今夜そこで寝てくれ」
「いえ、あの、まだ眠くないし……」
「じゃあ眠くなったら寝ればいい」
「え、えぇ……!?」
マリアは混乱した顔でグレイを見つめた。
いきなり部屋に呼ばれ、いきなりベッドに寝かしつけられたなら、誰だって戸惑うに決まっている。
……自分の部屋に戻りたいと言うか?
マリアに出ていかれては困るため、グレイはもう一度ベッドに腰掛けた。
「……ここで寝たくないか?」
「そういうわけじゃ……。なんで部屋に呼んだのかな? とは思ってるけど……」