心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「悪いな。もう二度とあの男とマリアを会わせたくないんだ」
「……どうして?」
「……どうしてだろうな。そう聞かれるとよくわからない。ただ、マリアとあの男が一緒にいるところを見るだけで無性に腹が立つだけだ」
なんとも自分勝手な意見。
そんな答えを聞いて、なぜかマリアは怒るどころか嬉しそうに口元を緩ませている。
……喜んでる?
マリアの黄金の瞳が、何かに期待しているようにキラッと輝きを放つ。
今にも光のカケラが瞳から溢れ出しそうだ。
「それって、アドルフォ王太子に嫉妬してくれたってこと……だよね?」
「嫉妬?」
マリアに言われてはじめて、グレイはこの黒い感情の正体に気づいた。
そういえば、前にエドワード王子に対して感じたものと一緒だと。今回はその時よりもさらに大きな負の感情だったため、同じものだと思わなかったのだ。
「そうか。これも嫉妬か」
「……気づいてなかったの?」
「ああ。こんな強い感情、今まで感じたことがないからな。マリアが関わるときだけだから、すぐにわからなかった」
「!」
妙に納得したようにそう言うと、マリアの体から黄金の光がパァッと溢れてそのカケラがベッドの周りに浮かんだ。
これが王宮の研究室で集めている光か? とグレイが目を奪われたとき──
「お兄様……もしかして、私のことが……好き?」
どこか自信なさげに、でも少し期待するかのように、マリアが小さな声で問いかけてくる。
真っ直ぐに自分を見つめる黄金の瞳。
その綺麗な瞳から目を離せずに、グレイは「え?」と呟くように聞き返した。