心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

98 ミアのキスの意味は『私はあなたのもの』


「お兄様……もしかして、私のことが……好き?」

「え?」


 マリアからの質問の意味が、グレイにはわからなかった。



 好き? マリアのことが?
 ……そんなのは当たり前だろう。



 グレイの中で、他人とは〝嫌いな者〟と〝嫌いではない者〟しかいない。
 エドワード王子やべティーナは〝嫌いな者〟に入り、レオやガイルは〝嫌いではない者〟に入る。

 しかし、マリアだけはグレイの中で唯一〝好きな者〟に入っていた。

 他人に興味のないグレイが、マリアのためならば行動に移す。
 マリアに対するこの特別な感情に、グレイ自身も気づいていた。


「マリアのことが好きなのは当然だろ?」

「!」


 何を言っているんだと言わんばかりのグレイの答えに、マリアの顔が嬉しそうに輝く。
 けれどすぐにハッとしてまた顔を引き締めた。


「あの、家族としての好きじゃなくて、その……女性として好き……なのかなって」

「女性として?」

「うん。あの、ほら。恋愛……っていう意味で」

「恋愛……?」


 グレイは聞き慣れない単語に顔を顰めた。
 今までの人生の中でその単語を見たのは、ガイルに強制的に読まされた小説の中でだけだ。

 当時13歳のグレイは、1人の女性を執拗に想い愛について語る男を心底気持ち悪いと思っていた。
 


 あの気持ちの悪い感情を、俺がマリアに……?


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