心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ん? 王太子?」
抱き合っていた体を離すと、マリアが不思議そうに尋ねてきた。
頬を紅潮させながら自分を上目遣いに見るマリアは非常に愛らしい。
グレイはそんなマリアに顔を近づけ、頬にキスをした。
「!? えっ!?」
マリアの顔が一瞬で真っ赤になる。
先ほどアドルフォ王太子に同じことをされたとき、マリアはこんなに動揺していなかった。
自分にだけこんな反応をしてくれるマリアを見て、グレイは勝ち誇ったような気持ちになった。
「なっ、なんで突然……?」
「……さあ」
そこ、さっき王太子にキスされたところだから。
そんな本音を言うのは躊躇われて、グレイはニヤッと笑って誤魔化した。
困った顔で赤くなっているマリアが可愛い。
その様子を見て楽しんでいると、マリアが座っていた体勢から膝立ちの体勢になった。
グレイの両肩に手を置き、少しだけグレイより高い目線から見つめてくる。
「マリア?」
「じゃあ……私からもしていい?」