心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

99 幸せな朝


 お兄様に好きって伝えた。
 お兄様に好きって言ってもらえた。

 その嬉しさと感動で、マリアは涙が溢れてくるのを止めることができなかった。
 大泣きしているマリアを見て、グレイが少しだけ動揺している。


「どうしたんだ、マリア?」

「……ううっ…………ヒック」


 なんでもないよ、これは嬉し泣きだよ。
 そう言いたいのに声がうまく出せない。
 自分でもどうしていいか困っていると、グレイがそっと抱きしめてきた。

 何も言わずに、ただ頭を撫でてくれている。
 グレイの優しさとその安心感に、マリアの涙は余計に止まらなくなってしまった。



 私、本当にお兄様に受け入れてもらえたんだ……。



 こんなにも幸せで満たされたのははじめてだ。
 涙が止まるまで、マリアは優しく温かいグレイの胸に寄り添っていた。








「もう大丈夫か?」

「……うん」


 どれくらいの時間抱きしめてもらっていたのか。
 マリアの涙が止まってしばらくすると、グレイが静かに問いかけてきた。

 体を離し、マリアの顔を見たグレイがフッとやわらかく笑う。


「目が腫れてるな」

「えっ……!?」


 言われてみれば目が重くてうまく開けられない。
 どんなひどい顔になっているのかと、マリアは顔を隠すようにパッと下を向いた。

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