心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「今夜はそのまま寝ればいい。泣いて疲れただろ」
そう言いながらグレイが立ち上がってベッドから離れたので、マリアは慌てて声をかけた。
「おっ、お兄様はどこで寝るのっ?」
「俺はソファで寝る」
「えっ。でも、一緒に……」
そこまで言って、マリアはハッとして言葉を止めた。
先ほどアドルフォ王太子に言われたことを思い出したからだ。
『ベッドの上で男と2人になったら裸になるカモしれナイ。だから恥ずかしくてミンナ顔が赤くなるんだヨ』
……ここはベッドの上だわ!
マリアはこれまで何度もグレイに一緒に寝ようと誘ってきた。
グレイに断られても、なんで? と理由を聞こうとしてグレイを困らせた。
もしグレイがマリアと一緒に寝なくなった理由が、その〝大人しか知らないこと〟だったなら──。
私は今までなんて恥知らずなことを……!!
過去の自分の無知すぎる言動に、マリアは恥ずかしくてたまらなくなった。
呼び止められたグレイは、不思議そうにマリアを見つめている。
「マリア?」
「あっ。ううん。な、なんでもない! おやすみなさい」
「? ああ。おやすみ」